「ゲーム配信業務」という下請け契約について

Youtube,Mixer,twitch,ニコニコ動画...
「面白いから」「暇つぶしに」「目立ちたい」とそれぞれの思いからテレビゲームを遊んだ様子をアップロードしていた時代は2007年を皮切りにして大きく変化しました。

YouTubeパートナープログラム

現在まで続く「動画の再生数に応じて収益を渡す」という動画共有サイトの運営形態は、当時限られた配信者への”お誘い”という形で産声を上げました。
その後期間を空け、2011年には一般向けに開放されると「職業:YouTuber」が世界中に広まっていきます。

「収益を得たい」という今までにない大きな原動力は、特に参入にかかる諸費用の下限が低い「ゲーム配信」を全盛期に放り込みました。
が、生活に必要な収入の全てを動画サイトの収益から得るのは中々現実的ではありません。かと言って大きく再生数が伸び収益が一定を超えれば税金も発生します。
更には参入者が次々と増えていく中で自然と動画の質の要である編集にも力を入れざるを得ません。
SNSでバズるにはどうするか。撮影する機材は、ネタは。身バレ炎上したらどうしよう。
etc,etc...

一方で逆側には、まとまった金銭はあるものの個人に起因する炎上など事業リスクは回避したい。あるいは機材貸与やゲーム会社との仲立ちについてノウハウを得つつある集団が出来つつありました。

個人と集団が出会うとき……


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「ゲーム配信業務」の誕生です。

と、仰々しく書いたものの、要は芸能人という個人事業主と事務所という会社法人による提携業務がネット上に進出したにすぎません。プロゲーマーもその範疇です。
さて、そこで顔を出すのが「下請法」
これを昨今話題になったいくつかの事例を出して「法的にはこうなるんじゃないか」と妄想するのが本記事の趣旨。
ではいくつか行ってみましょう。

なお、現時点の趨勢を反映し、多分にVTuber要素を含みます。

・配信者にもっと還元を!

一度の配信で数百から数十万円の投げ銭が飛び交うと言われる中、配信者が受け取れるのは月20万円前後、そこに投げ銭を一定の計算で加算すると言われておりファン側からは不満が寄せられることが度々あります。
ですが、個人事業主の多くは不定収入に悩まされがちであるということは無視出来ません。

”生活可能な定収入”というのは大きな安心感につながり、そのうえ事業経費による節税が行いやすい業態です。
完全に消費した金額を取り戻せるというわけではありませんが、撮影に使う機材はもちろん、食費や家賃についても一定の経費按分が認められているようです。また、
額面に対して使えるお金は大きいと考えています。
(なおボーナスは)

・あの配信者は特別扱いされていて何倍も貰ってる!

詳細な取り分計算は個々の事務所で当然行っていると考えられますが、下請法の解釈次第では月収入分は大きく変わらないはず
下請法第4条第1項第5号「買いたたきの禁止」がこれに当たると思われます。

「発注した内容と類似した内容に対して通常支払われる報酬より著しく低い額を不当に定めてはならない」

つまり「ゲーム配信業務」という類似した業務を何十人とも契約している場合、それぞれ月額の支払いは大きく変わらないと考えられます。
一方、”不当”でなければ減額は可能ですので「配信回数が基準を下回っている」など明確な基準を定めた上で減額を行い、その結果として同業者間で大きく差が出ることはあり得るでしょう。投げ銭分の加算も別途あります。コラボレーションやリアル営業など、業務としての独立性が高い場合は別単価で積み上げ加算することも考えられます。
現実的に、事務所から見たら委託費用をばらけさせるのは面倒が多すぎてやりたがらないのでは。

・配信者さん今月配信多すぎじゃね?

上記した月支払い形態は芸能系の委託としては実は少数です。
先日、芸能プロダクションである吉本興業のギャランティーが話題になりましたが、一般的には件数×単価を基本とした「単価契約」が商慣習として定着しています。
ゲーム配信にこれを当てはめるとしたら「配信時間」あるいは「配信回数」に単価を設定することは可能と考えられます。
まぁ書き入れ時ってやつなのでしょう。

・あの事務所は会社持ちの共同サーバーなのに、こっちは配信者が運営してる、なんで?

マインクラフトなどのマルチプレイゲームはコラボレーションの機会を提供しており、これの運営が事務所により異なるのは興味深い事例です。
配信者運営の場合、収入源である配信時間が諸作業に割かれ、月の維持費は不定収入に対しての支出として圧し掛かってきます。
さて、下請法第4条第2項第3号「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」というのがあります。

「親事業者が委託先から金銭、労務の提供を受けてはならない」

これを上記の「配信者によるサーバー運営事例」を対象に配信者に好意的な解釈をすると以下のようになります。

「配信者のコラボレーションで発生した広告収入および投げ銭は発注した事務所が多くを受け取るため親事業者への利益関与が大きい。にも関わらず下請け先である配信者がサーバー運営を行っている。これは同号の”不当な利益提供”に当たるのでは」

答えとしては恐らく「該当事務所の基本契約体系は”配信に必要な最低限のツール提供に限る”と発注者側で制限していること」例えば契約に際して「特定の事業者に対して特別扱いはしない」という契約的制限をしている場合が合致するのでは。
事務所在籍者全員が利用する場合は”特別扱い”に該当せず費用を事務所で負担できるでしょうが、契約に当たり「○○グループの費用は出して、その他は出さないなんて不平等はしない」という旨を記載していた場合、事務所では出してあげたくても出せないという状況が発生します。
もし、良かれと思った平等さが首を絞めてるとしたら因果なものです。

・結局契約次第でしょ

そうだよ。
(契約次第だからつらつら述べるのに徒労感)

会社勤めではない最大のメリットは仕事を選べることにあります。
その選べる、というのは契約を交わす時までのことを指すわけですが、一発当てたい身としては中々仕事を選ぶことができないというのも正直なところでしょう。

では現実的にどうすべきか。
あなたが契約をするとしたら、収益の内容以上に解約するときの手順についてどのように決めているかについて脳漿を絞らなくてはなりません。

終わり方を選べないのは嫌でしょう?

補記
詳細は公正取引委員会の公式資料をご覧ください。ブログ内容は雑です。
「事務所内の配信者ハブり」とかも下請法に引っかかりそう。だけど契約次第かなぁ。

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